勝負は時の運と言いながら、勝負の好きな人々…は結構多い。
国技である相撲は、勝負の価値観を真ん中にすえた呪術芸能であるとも言える。
地方に残る赤ん坊の泣き相撲などは豊穣祈願の祭事だし、神輿をぶつけ合って互の集落の生産予測を競うのはすべて勝負に託して豊穣を手にしたい切なる願望だ。人と人、集落と集落、国と国、現に信州と駿河の國境では、毎年綱引きをして国境線を定めている。勝負するという気概が日常にみなぎっていた。
そうした生活の切なる願いがいつしか喪失して、勝負は面白おかしい比喩と堕落していった。
異性との出会いに、女性たちが口にする勝負パンツなどというのは、もっとも卑近な使用例だ。勝負という概念はここではマグワイ達成のためのまき餌でしかない。
ところで今脚光を浴びているのが、カレーライスにトンカツをのせた「カツカレー」だそうだ。自民党総裁選に皆それぞれカツカレーを食べて出陣したと報じられた。安部さんは数千円する高級カツカレーを食べたそうだが、その高級カツカレーは何処に行ったら食べられるのか、落選した誰さんはカツ丼だったそうだが、よもや云々と、候補達の識見ではなく国会勝負食としてのカツカレー、カツサンドに話題が集まっている。
政治報道がこうした次元でかたられるのは、なんとも悲しいことだが、記者の立場になるとほかに報ずべき記事はありません、ということなのだろう。政治アナリストはいざと言う時にカツを食べるのは、自民党の文化だと公言しているが、某領袖は「敵に勝つために」といってビフテキに加え、カツカレーを食べたそうだ。勝負の質がどんどん解らなくなっている。
勝負パンツから国会勝負食
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プロフィール
星野 和彦
Kazuhiko Hoshino
1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表
作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞
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