刺青とタトゥーの今。

by

in

 刺青者といえば犯罪者を意味していたのも、今は昔、どうやらタトゥーと呼んでファッションであるらしい。若い人はジョニー・デップの手首やら安室奈美恵の二の腕をみて「素敵…」と感じるらしい。任侠映画の背中の彫り物や、江戸時代の墨刑を知っているものにとってはとてもついていけない価値観なのだ。アイヌや沖縄の習俗にあったような成人のための通過儀礼であれば、冷静に受け止めることも可能だが、やくざ社会の証明書のような刺青であれば、どうしても反道徳の旗印と写ってしまう。かって北島さぶちゃんのショウを演出した際、彫りの名人梵天太郎に声をかけ、女性のカラダのあちこちに伝統的な模様を描きこんで(無論終了後はすぐ消えるように)、ショウの句読点としてクローズアップしたのだが、あのときのすさまじい反響を思うと隔世の感がある。ベッカム様の全身、工藤静香や酒井法子の足首、土屋アンナのお尻は火の鳥と蛇に覆われて、まともなゴルフ場やサウナには一生入らない覚悟のうえの愛の誓いなのだろう。愛のかたちも簡単に変る世の中なのだから、「迷う人は彫らない事を勧める」というのが真面目な彫師の意見だ。


コメント

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です


プロフィール

星野 和彦

Kazuhiko Hoshino

1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表

作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞


カテゴリー


月別アーカイブ