秋田の味というより、日本の冬の味というべきか。
秋田の芸能ウォッチングで旅をしたとき、男鹿半島の古老に秋田へ来たらまず「しょっつる」と「きりたんぽ」だといわれた。東京で暮らしていると、冬はまず「ふぐ」を思い出すが、東北の冬に似つかわしいはのは、なんといっても「しょっつる」と「きりたんぽ」。
晩秋から冬になると、何故ハタハタが秋田の海に来るのかよく解らないが、大量に獲れるハタハタに天日塩だけで発酵させた「しょっつる」の魚醤にはえもいえぬ味わいがある。旬のはたはたにネギだけ、それを「しょっつる」で焚けば充分、関東の寄せ鍋のごとく白菜やら豆腐やらゴタゴタと入れないところがいい。
「しょっつる」も諸井醸造の10年熟成のロット・ナンバー入りは凄い。世界中探しても、10年もの長期熟成した魚醤はまず見つからない。はたはたが、魚へんに神と書くことも最近まで知らなかった。
海の恵みが「しょっつる」とすれば、山の恵みは「きりたんぽ」だ。南部のマタギが熊撃ちに行くとき、握り飯ではなく、タンポを持って行ったのが発祥とか。串に飯を握りつけ焼いたものが、槍の穂先の鞘に似ていたところからタンポの名が付けられたそうだ。
比内鶏、舞茸、ごぼう、ねぎ、せり、糸こんなどを、比内鳥のスープで焚き、きりたんぽを加えて食す。秋田こまちで作ったきりたんぽに、地鶏の旨味が絡んで絶品の鍋になる。秋田の人々は雪深い冬を贅沢に過ごしてきた。温泉場の会席料理など足元にも及ばない。
最近では近くのスーパーに、きりたんぽセットなどあるが、なぜか胡散臭い。郷土の名物はその地にあってこその名物だと思う。
冬は「しょっつる」「きりたんぽ」
コメント
1件のフィードバック
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山形県で行われる、日本一の芋煮会フェスティバルでも、水も含めて全て山形の材料で作られる、芋煮も諸井さんの醤油だけは、外せないようです。
ライバルがプライドを捨ててでも使いたい醤油、分かる人だけが、支えているホンモノの姿ですね!
プロフィール
星野 和彦
Kazuhiko Hoshino
1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表
作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞
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