偽物大好きなヤマトの人々

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 偽物といえば、すぐルイ・ビィトンやらウオールサムの事を考える人は、相当なモノのヤマイにかかって居る人と見えた。病状の重い人は、駅前のアウトレットに行くと列をなしている。五体満足のニセモノ・マニュアは、香港へ香港へと旅を急ぐ。
 食堂街を覗くと、店頭のガラスケースには本物そっくりの食品見本が並んでいる。まぐろ、かんぱち、いか、甘えび そして山葵 どれをとっても、実に美味そうだ。隣の店には昔ながらのミートソースをまとったナポリタンがホォークに巻かれて宙に浮いている。色艶も美しくよもやこれが偽物の蝋細工だとは、お釈迦様でも気がつくめぇ、といったところだ。
 ひと頃、外国からお客さんがくると、かならず合羽橋に連れて行った。彼も彼女もニセモノの食品見本に狂喜した。イミテーション、偽物を作る日本の技術にびっくりし、脱帽した。
 芸能の歴史にも、「もどき」といわれるニセモノの歴史がある。駒ヶ根に伝わる青獅子の話なども、狼にかわっての忠犬のお話にもどかれている。新野の雪まつりでは、「さいほう」の次に「もどき」が登場し、総て逆を舞って「さいほう」の霊力を強調する。
 世阿弥は、能の本質を「ものまね」にあると花伝書に喝破しているが、日本人の本質は「ものまね」「もどき」にあるのかもしれない。
 世界一の観客動員数を誇る東京ディズニーランドにしても、日本歴史の何処にもないウォルト・ディズニーの作り話に、興奮し押しかける不思議の国の人々なのだ。


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プロフィール

星野 和彦

Kazuhiko Hoshino

1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表

作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞


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