修道尼の大ラインダンス

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 ラインダンスの極めつけは、ニューヨーク・ラジオシティ・ミュージックホールにとどめを刺す。クリスマスにN.Yに心ひかれるのは、壮大なラジオシティの見事なラインダンスがあるからだ。カジノ・ド・パリのレビューもまた、サクレクゥールの丘に見立てた大階段を舞台にしたラインダンスが魅力になっている。
 ブロードウェイに今大受けのラインダンスがある。修道院の尼僧たちが、乗りに乗って踊りまくる不謹慎かつ解放感にあふれたラインダンスだ。
ロンドン・ウェストエンドに生まれたMUSICAL 「SISTER ACT」。映画「天使にラブソングを」の舞台ミュージカル化なのだが、音楽もマーク・シャイマンから、アカデミー賞を8度も受けた名手アラン・メンケンに変え、底抜けに明るいシチュエーション・コメディになっている。
 ネバタの暗黒街で、やくざのリンチを偶然見てしまったクラブ歌手デロリスが、逆に奴らから命を狙われ、修道院に逃げ込むところから話は広がっていく。日々禁欲と摂生をつらぬいているシスター達もじつは、黒衣のしたに情欲が疼いている。シスター・クラレンスとして逃げ込んだデロリスの影響から、讃美歌はロツクとなり、ソールとなり、はてはディスコやラインダンスにまで発展してしまう。
 黒衣のもつている記号としての処女性や、高潔な倫理観が、悪意なく裏切られ、スポーティに現代風俗に転化する二重構造がとても面白い。石のように変わらない修道院の院長もそこいらにいそうだし、タテマエと本音を使い分ける坊さんたちも沢山いる宗教のパロディでもある。
 52丁目と53丁目の間にあるブロードウェイ劇場で上演中、フィナーレでは巨大なマリア様までが黄金に輝き、グルグルと廻り出す。


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プロフィール

星野 和彦

Kazuhiko Hoshino

1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表

作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞


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