この耳慣れない「非実在青少年」という呼称は、警察庁から出向している警察官で固められた東京都青少年治安対策本部による新造語だそうだ。非実在青少年による性交または性交擬似行為をみだりに描いたり、性的対象として肯定的に描写したものを禁止しようというのが、騒動の発端だ。
東京都青少年健全育成条例改正案にまつわる賛成派と断固反対派の対立がとけない。都知事は自分がかつて描いた青い性「太陽の季節」の作者であったことは、まつたくお忘れになったごとく、規制路線一本槍で突き進んでいる。反対派は漫画家、アニメ作家、ゲーム・クリエーター、児童文学者、それにメディア関係まで巻き込んで、表現の自由が奪われると騒いでいる。漫画、アニメだけでなくいろいろな表現媒体が規制でしばられ、元気がなくなり、世の中が狭く息苦しくなる。という主張はもっともだが、だからと言って表現の自由がすべてなくなるというのもマス・ヒステリアではなかろうか。いかにも安っぽいゾッキ本風のマンガに芸術性の片鱗はなく、あれがこの国の文化だと云われても困る。刺激第一のマンガは何処まで行ってもマンガで、そこに密度の高い文学性はない。表現も思想もあまり上等とはいえない。
ここで注意をはらわなければならないのは、この条例の後ろにいる東京都の諮問機関「東京都青少年問題協議会」なる組織だ。警察関係団体幹部、キリスト教原理主義団体幹部などを中心に構成され、永年児童ポルノ禁止法で、マンガ、アニメ、ゲームの規制を主張しつづけてきた。ほっておくと声優の演技まで規制対象になり、ルパン三世のあの峰不二子の声まで、規制対象になりかねない危険性がある。不健全な社会は放置して非実在青少年の性的表現だけを規制しても、どこか間の抜けたまつりごとではなかろうか。
俎上に上った非実在青少年。
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プロフィール
星野 和彦
Kazuhiko Hoshino
1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表
作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞
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