人はなぜ「不倫」をするのか

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人はなぜ「不倫」をするのか
 岡本かの子、松井須磨子、柳原白蓮 …… いずれも時代を騒がせた不倫女たちだ。
 夫のいた身のかの子は、それだけでは満足せず若い二人の愛人とともに四人暮らしの毎日を送った。ひとつ屋根のもとに3人の男を置いて、日夜逸楽に身を焦がしたといわれている。
 肉体派女優の須磨子は、妻子ある島村抱月を骨抜きにし、抱月のもてる才能を十二分に利用して女優と演出家の恋の先駆けとなった。
 大正期熟女のアイコン 柳原白蓮は大富豪の夫に離縁状を叩きつけ、法学部の学生と駆け落ちした。
 いずれも明治以降の輸入版キリスト教的一夫一妻制になじめず、勇敢に恋に走った烈女たちだ。一夫多妻の武家社会から解放されたとおもったら、こんどは舶来の貞節が社会に侵入してきた。いずれにしても支配階級に都合のいい倫理観と見破っていた。より人間的に行きたいという本能が、不倫と呼ばれる行動に彼女たちを走らせた。
 自らの職業を賭して路上のキッスに走った山本モナにしろ、北海道に密会旅行を敢行した斎藤由貴にしろ、夫がありながら今井美樹の夫布袋寅泰とダブル不倫に走った高岡早紀にしろ、みな抑えきれない衝動に平和な日常を破ったであろうことが想像できる。
 「不倫は文化だ」といったのが、石田純一だからいけなかった。瀬戸内寂聴が数珠を片手に「不倫は文化です」と説教すれば、その後のこの国の女性による倫理観もだいぶ変わったことだろう。すくなくとも熟女たちの恋はより積極的な意味をもって語られるような時代を、迎えていたような気がする。
 不倫に後ろめたさはついてこなかったろう。
 イタリアのベルルスコーニ首相、ロシアのプーチン大統領、フランス・オランド大統領、みな後ろめたさのない恋の日常を楽しんでいる。
 「人はなぜ不倫をするのか」ではなく、「人は一生恋をする」のだ。


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プロフィール

星野 和彦

Kazuhiko Hoshino

1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表

作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞


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