つきよに まくらと ぼく なかよし
不思議な太いタッチの絵本が送られてきた。 井上洋介さんの遺作絵本である。
昭和6年3月7日生まれとあるから、ほとんど同世代だ。 画家でありながら、漫画、タブロー、絵本、その他あらゆるジャンルの仕事をした。
筆者の記憶のなかでは、パリから戻ってまもなく遭遇した「箱類図鑑」の印象が強烈に残っている。その箱のなかにはいろいろなものが入っていた。変なおじさんから太っちょの女のひと、お尻やら生首やらヌードの女体などなど、ナンセンスにして奇想天外な世界、1枚1枚から強烈な刺激をうけた。箱はまま涎もたらした。
同時代の池田竜雄さんや、横尾忠則、山藤章二さんらに共通する黒い人間観に満ち溢れていた。この作品は後に久里洋二らによってアニメ化され、音声はオノ・ヨーコがふきこんだ。
が井上洋介さんとは交流はない。友達だったのは洋介さんのお嬢さん、井上真樹さんだ。
彼女は文章をたしなみ、オートバイを駆使して日本中を走り回る女性だった。30年も前の青山通りのマドンナ、アオヤマ・アイドルズの統領だったこともある。普段はおとなしい品性のある女性なのだが、たまにタガが外れると、とんでもないことになる。まぎれもなく井上洋介さんの娘にふさわしい。
その井上真樹さんが、父の死に直面してお葬式は勿論のこと、偲ぶ会やら納骨やら、人並みの法事を勤めているのが、なんともいじらしい。父も娘も愛してやまなかつたのは10数匹の猫ちゃんだつた。
井上洋介さんと真樹ちゃんと 猫なかよし
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プロフィール
星野 和彦
Kazuhiko Hoshino
1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表
作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞
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