五番街のイースター・サンデー

　「イエスは真に蘇えった」と聞かされても、キリスト教信者ではないので有り難味はない。「復活祭」だからどうしたの？　はなはだ無責任な大人と非難されてもしかたがない。
　まだ東京の其処此処にB29の焼跡が残っていた昭和25年、「イースター・パレード」という言葉にインスパイアーされて有楽町映画街に足を向けた。　スクリーンでは、フレッド・アステアとジュディ・ガーランドが夢の衣裳で踊っていた。ハリウッドそのもののようなアーヴィング・バーリンの音楽はアカデミー賞作曲賞にかがやいていた。イースター・パレード…ブロードウェイにはこんなお祭があるんだと、興奮してキリスト様を忘れていた。
　61年後の今日、大きな花のボンネットの色っぽいお姉さん、天使の羽根を背負わされた少女、黒いオカマのレオタードのカップル、マイホームの模型を乗せた太っちょの伯母さん、その他もろもろイースター・サンデーの五番街は帽子の甲子園状態、連れられた犬たちはあらかた兎の耳をつけさせられている。兎は繁殖力が強く、イエス・キリストの復活にイメージがダブるという。
　ロックフェラー・センターのアイスリンクでも縫ぐるみの大きな兎が何匹も滑っている。ベンチではパレードで疲れ切ったアンパンマンの帽子の家族づれが、無言でアイスクリームを食べていた。
　聖カトリック寺院、聖トーマス教会、長老派教会、五番街にある教会はみなそれぞれに復活祭の礼拝をしているが、そとはコスプレ祭りの如く盛り上がり、ニューヨークのお上りさんで溢れている。かたわらには、日本のツナミに義援金をと叫んでいる日の丸を背負った黒、白、黄色の混成グループがいた。復活祭はキリストならぬ現世日本に必要ということか。