予期せざる文明戦争・イスラム国

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 イスラム国を考えることは、いまの世界を考えることだ。
 僅か半年前に国家樹立を宣言したイスラム国だが、ここに内在する問題は今世紀をゆるがすことになるかもしれない。当時イラク北部のモスルを攻撃した兵士はわずか1500人、それが今や35000人の兵士を擁する国に成長した。国といっても、従来の欧米諸国にあった国家の概念とはまったく異なる。国境はない。イスラム教のなかでも更に過激な純化路線を要求する文明のエリアである。世界中から集まった人々に生活費をくばり、武器をくばってジハードを要求し誓約させる。
 イスラム国には、ロシア、ドイツ、イギリス、フランス、そしてアメリカ、インドと、あらゆる国から若者が集まっている。そこには21世紀になっても解決できない貧困の問題、人種差別の問題、女性、老人、外国人についてまわる格差差別社会が横たわっている。
 アラブの春を演出したアメリカのクーデター・システム、情報技術にかかわるメディア・IT業界、世界市場を牛耳る超コングリマリットの支援が、アラブの春の進行とともに裏切られ、自分たちに革命の刃が向かうようになってしまった。ウサマ・ビン・ラディンもアルカイーダもCIAとの密接な関係でコントロールできたのだが、イスラム国にいたって完全に糸が切れ、牙をむいてきた。
 母国には居場所がなかったという若者たちが陸続と集まっている。
 イスラム国の勢力拡大が欧米先進社会が抱える弱みの写し鏡であるとすれば、空爆ではなにも解決しない。一世紀に渡った移民政策、グローバルな門戸開放への反省が、いまヨーロッパを駆け巡っている。


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プロフィール

星野 和彦

Kazuhiko Hoshino

1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表

作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞


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