ファッションの仕事から離れて、もう四半世紀にもなる。
久しぶりにモデル歩きをするモデルに出会った。
ドヤ顔で、腰に手をやり肩を揺らせながら歩く。いわゆる日本にしか生存しないモデル歩きをするモデル達だ。欧米のコレクションでは、全く見ることのない不思議な歩き方をする。
多分、あの歩き方はモデルになりたい女の子にとつて憧れの歩き方なのかもしれないが、残念ながら30年前に本場では、とっくに消滅したオールド・スタイルの歩き方なのだ。
ディオールのライン・ファッション時代にスカートの下に穿いていたペチコートを裁くため、足をこねてターンをしたり、ターンをしながら服を見せるステージングに伴って、出てきたテクニックなのだ。60年代のドレメのショーなどでは、猖獗をきわめた。肩とつま先でへんなリズムをとりながら、オバカなモデルがドヤ顔で歩く。
あれからファッションも随分変わった。クチュール・ファッションから、プレタポルテの時代になり、さらにユニセックスなストリート・ファッションの時代となり、表通りはカジュアルなストリート・ファッションが行き交っている。
若い学生たちが中心のキャンパス・コレクションに、雇われて登場したモデル達なのだが、多分指導者のノウミソが、どこかで思考停止状態なのだろう。本人たちも時代を感じる能力もなく、ウェアをみて歩き方を工夫する神経も脱落しているのだろう。自然にナチュラルに歩いてこその、いまのモデルの筈が、博物館のホコリの中から出てきたような、不思議な生き物だった。
不思議の国のモデル歩き
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プロフィール
星野 和彦
Kazuhiko Hoshino
1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表
作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞
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