万引きと原発と

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 「万引き」という行為は17世紀末に登場したそうだ。
 しばらく前まで「万引き」は、貧困が引き起こす行いと考えられ、貧困がなくなると女性の生理の不安定から行為に及ぶと解釈されてきた。
 が実は資本主義社会に於ける物の商品化、物を買って生活しなければならなくなったとき、「万引き」という行為が発生した、とシカゴ・デポール大学のレイチェル・シュタイアか書いている。
 つまり物の流通、販売が支えている資本主義のなかで、致し方なく発生した行為が、「購入と万引き」という行いだという。流通経済の高密度化とともに万引きもまた超絶技巧の道を歩む。
 17世紀から133年間イギリスでは万引きは絞首刑になっていた。がそれでも防ぎきれず、様々な監視システムと機械が工夫された。「防犯」という人間不信を前提にしたテクノロジー産業が発生した。
 いまや先進国のすべてに行き渡っている監視カメラとそのシステム、セコムの人達、「万引き」「窃盗」もすべて資本主義の拡張経済に貢献する要素になっている。僕らは、犯罪が経済の維持に役立っているヘンテコな社会に住んでいるのだ。
 こういう風に考えると、「原発」もまた同じ構造をもっている。いつ人間の命を奪うかもしれず、人間の生きている自然を奪うかもしれず、最終廃棄物の処理方法も決まらないうちに、その防災と維持のためのテクノロジー産業が発生し、肥大化して資本主義の流通経済に組み込まれてしまう。原発のモラルは忘れられ、これがなければ我が国の産業は立ち行かないと主張する。
 人間の罪悪に目をつぶって、金儲けに走る困った財界人や政治家がどんどん発生し、権力におもねる。


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プロフィール

星野 和彦

Kazuhiko Hoshino

1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表

作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞


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