「成人式は貸衣装で着飾る」こんなバカな習慣をはじめたのは何処のどいつだ。
それも2年前から予約しておいたのに、泣きっ面に蜂とはこのことである。
結婚式はレンタル・ドレスの一人勝ち、いちども来たことのない豪華なシルエットのドレスに身を包み、さらにお色直しと称してセカンド・ドレスを着込む。キモノの出番が極端にすくなくなった。そこで考えたキモノ屋が、テリトリー拡大とばかりに「成人式は振袖で」と殴り込みをかけ、まんまと騙したのが成人式のキモノといえよう。
母親やらお祖母ちゃんのキモノを着るのならば許せるが、カタログ写真だけをみて何十万円もの予約金をだして貰うという神経がわからない。
業者はインスタ映えならぬカタログ映えのフリソデ姿をぞろり揃えてカモをとりこむ。近頃のフリソデは染め縫い刺繍などといった伝統工芸の技術によってつくられたものはほとんど無く、あらかたは印刷のフリソデなのだから、あきれた口がしまらない。
付き添いの親や娘に正しいフリソデと印刷のフリソデを見分ける力がないのだから、業者はしめしめなのだ。それでもハレノヒのように倒産する間抜けな貸衣装やがあるというのはどうしたことだろう。
国家に優れたリーダーがいれば、成人式の貸衣装は止めよう、明日への覚悟を書こう、と50字でも100字でもいいから、新成人のメッセージを受け取る日とし、虚飾を排して普通のフォーマル・ウェアで集まろう、という成人式ルネッサンスをかかげる筈だが、残念なことにそうしたリーダーはどこにも見当たらない。
「はれのひ」の責任を問う前に、我々自身の生活感をととのえることこそが重要ではなかろうか。
レンタル着物の成人式はいらない。
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プロフィール
星野 和彦
Kazuhiko Hoshino
1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表
作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞
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