レビューに溺れた女たち

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 タイム・カプセルをそォっと開けてみたら、スタスのレビューがあった。
 結成20年を迎えたSKD松竹歌劇団の残党4人で始めたレビューが20年を迎えた。
 松竹が25年前に棄てたレビューを、女性4人のダンサーの情熱と努力で今日まで維持、発展してきたのは、奇跡のもの語りだ。興行会社に頼らず、芸能プロダクションにも所属せず、4人の女性のカロリーで50人のメンバーをまとめ、20年の活動をつづけてきたというのも夢のまた夢にちかい。
 女性が4人集まれば、旅をしても、女子会をしてもなかなかに難しい。それぞれの生い立ち、それぞれの気分、それぞれの思惑、それぞれの趣味、それぞれの才能、それぞれの恋人、すべてが異なるのだからそのアンサンブルを長く続けるというのは無理難題。そこにある主題がよほど強固でなければならない。
 レビューはいま滅びの芸能になっている。SKDの本拠とした国際劇場はなく、NDTの日劇もない。本場パリではカジノ・ド・パリもホーリィ・ベルジュールもなくなった。ラジオ・シティ・ミュージックホールもクリスマスだけ。ラスベガスもシルク・ド・ソレイユの前に変質してしまったし、ディズニーの戦略によってすべて商業主義に塗り固められた。世界中どこへいってもメカニズムとコケ脅かしの芸能になってしまった。
 スタス20周年記念公演は素敵だった。度々目にしてきたが、道具も整理されて余分なものがなく、衣裳もそれなりにみていられた。もっとも重要なのは振付だが、あらためて西崎真由美、松見登という代え難い宝物を認識した。篠井世津子の巴里も詩情溢れていたが、風船の展開に今ひとつの工夫があったらよかった。
 千羽ちどり、高城美輝、明石薫、銀ひ乃で レビューに溺れた4人の20年に乾杯。
 


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プロフィール

星野 和彦

Kazuhiko Hoshino

1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表

作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞


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