カリント饅頭がわがアトリエでブームになっている。饅頭の皮に黒糖をきかせ、すこし焦がしたサクサクした生地であんこを包んだ単純な饅頭だ。かりんとうのような皮の触感と中味のあんこの取り合わせが絶妙な美味さを演出していて、このところ三時のおやつ人気ベストワンを張っている。
だんご、大福、饅頭といえば日本の三大スイーツだが、いちご大福だの、だんご三兄弟だのと出尽くした感ありでこの先はチョコレート菓子やらなんとかケーキのパテシエの蹂躙にまかせるほかなしとあきらめていた。そこにしずかに登場したのが「かりんとう饅頭」だ。
大河の風浪を鎮めるために諸葛孔明によって造られたというレツドクリフの饅頭は、海を渡って奈良饅頭となり、結婚を祝う紅白饅頭となり、不幸のための葬式饅頭となり、温泉の蒸気でむして温泉饅頭となって日本の津々浦々まで行き渡った。お茶人には皮に山芋を練りこんだ薯蕷饅頭があり、山陽新幹線に乗れば「もみじ饅頭」は如何ですかと、饅頭売りがやってくる。さように日本中に根を下ろした饅頭だつたが、もはや完成の域に達したものと思っていたのが誤算だった。
元祖を名乗るのは福島田村のあくつ屋だそうだが、長野松代の蔦屋の「大名のおこびれ」となずけたかりんとう饅頭もなかなかいける。皮は蔦屋、中身は玉屋とか、いや安曇野の胡蝶庵だとか、このかりんとう饅頭戦争には、地方の和菓子屋が次々と参入、ひょっとすると駄餅ルネッサンスのきつかけになるかもしれない。庶民の和菓子として、平成に登場したジャパニーズ・スイーツとして大いに期待している。
後村上天皇に初めて饅頭を献上したとき、天皇はあまりの美味さに、お礼として宮廷一の美しき官女を塩瀬の林浄因に賜ったとあるが、饅頭の美味さはそれほど偉大なものなのだ。
レッドクリフからかりんと饅頭へ。
コメント
2件のフィードバック
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北信州は寒いです。17日岡田道哉さんの個展に行ってきます。そろそろ粘土いじりします。
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かりんとう饅頭は、いっぺんに2個以上食べると甘すぎて、美味しさ半減です
プロフィール
星野 和彦
Kazuhiko Hoshino
1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表
作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞
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