それは土曜日の夜だった。
ルーブルのあちこちで白いドレスを着た女性を眼にした。こころなしか男性も白いスーツや、白いシャツの男が多い気がした。
アート・ショッピングの会場はルーブル中庭の地下にある大ホールなので、地上のルーブルも見たくて宮殿の中庭に行ってみた。
夜のルーブル宮はライトアップされ、中央のピラミットは光をたたえて幻想的に浮かんでいた。がよく眼をこらすと広い宮殿の庭に白い人々のかたまりがみえる。それもひとつではなく100人近い人々の群れがもうひとつ、またもうひとつ、と闇に浮かんでいる。
近ずいてみた。白い服装の人々が白いテーブルで食事をしている。グラスを捧げて乾杯をしている人々もいる。なかには踊っている白いカップルもいる。ピラミットの灯りを背に白い人々の優雅なパーティがくりひろげられていた。
踊っていても騒がしくなく、おしゃべりをしていても静かな空気が支配して、タイムスリップしたような不思議な気分に包まれた。
後で調べたところ Dîner en Blanc デネ・アン・ブラン 白いディナーと呼ばれているプライベート・パーティだと理解した。25年程前から始まりいまでは、すっかり根付いていているホワイト・パーティだという。 このパーティにはルールがあるそうだ。
①直前まで会場は知らせない。 ②すべては秘密裡に進める。 ③椅子、テーブルと白いテーブルクロスは各自持参の事 ④飲み物とディナーも各自持参 ⑤セッティングから後かたずけまですべて自分たちでやる。⑥ドレスコードは白であること、そしてすべてはエレガンスでなくてはならない。
いままでこのパーティは、コンコルドの広場、ノートルダムのお寺、ベルサイユの庭、エッフェル塔の下などでも開かれたそうだ。
ルーブルの夜の白いパーティ
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プロフィール
星野 和彦
Kazuhiko Hoshino
1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表
作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞
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