「おい、なにを悩んでいる? 浮かない顔してるぞ」
「あぁ…どうしようかと、困ってるんだ」「…実はルンバを買えって迫られて…」「なに?ルンバ!」
「うん…自動掃除機のルンバ」「しかし、チャンと掃除をしてくれるかね」
「あぁ、近頃のルンバはだいぶ優れものらしい」「四角いところを丸いルンバがやったつて上手く行く筈がないだろう。角は残るさ」「俺もそう思うんだが、娘は違うっていうんだ…近頃のルンバは部屋の隅々まできちんと掃除するって、やたらルンバの肩を持つんだな」「へぇ…」
「なんでもセンサーが数十個ついていて、老眼のパパよりもゴミ探査能力は100倍優れていると抜かす」 「まあ、そこまで言われちゃ仕方ないが、充電式の掃除機でいままでちゃんとゴミをとってくれた掃除機には出会ってないぞ、どこか頼りなくて弱いのが充電式というやつだ、まあ掃除機の草食系だな」
「それについては新幹線のお掃除部隊をみろ、っていうんだ。みんな小型の携帯掃除機で、あっという間の掃除をする。あれこそが今の掃除機だと、いいやがる。」「しかし、この何年随分掃除機には騙されてきたからな。新婚当時の掃除機はやたら重かった、すこし軽いのは、吸い込みが悪かったし、日本の家電メーカーには散々だまされてきた。」「だからアメリカのルンバは凄い、と言いやがる。福島原発でも、イスラム国との
戦争でも、火星探査でも働いているのは、ルンバのアイロボット社製らしい。吸引力5倍、清掃能力50パーセントアップというのが、最新ルンバらしい」
「お前もう完全にルンバに洗脳されてるな。だいたいアイロボット社っていうのは、マサチューセッツ工科大学の学生が作った会社だろ。原爆をつくったのもマサチューセッツ工科大学だぜ。日本人としては我慢ならない相手だ、NASA御用かなんかしらないが、我が家には生きたルンバがいるからな…少々痛んでいるが、まだ当分使えそうだぜ。」「困ったもんだ。お前のセクハラ病もいつこうに治らないなあ」
「ああ、なんなら家のルンバ熨斗つけて贈呈するぜ」「…?…」
ルンバ買うべきか、買わざるべきか。
コメント
プロフィール
星野 和彦
Kazuhiko Hoshino
1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表
作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞
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