ルパン3世峰不二子の声

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 半世紀前、空襲で焦土と化した東京、そこで芝居のできる劇場は三越劇場位しかなかった。焼け残った壮麗なロココ風の劇場は、演劇青年達憧れの空間。新劇も児童劇もみな「いつか三越劇場で」を合言葉に創作活動に励んだ。その劇場でミュージカル「赤い靴」を発表し、中原淳一の美空間を主役に「若草物語」で話題を呼んだのが、僕らのグループだった。唐十郎、佐藤信、長山藍子など明日を約束された豊かな才能が溢れていた。そんな三越の舞台でタイツをはき颯爽と男役を演じていた少女がいた。いまならさしずめ宝塚のトップスターといつたところだが、その少女は劇団四季にスカウトされ、初期のTVドラマにもでていたが、やがてメディアのむなしさにいっさい顔を出さなくなった。ルパン3世峰不二子の声を官能的に演じる増山江威子、その人である。かるいざわ朗読座の「愛は禁断を超えて」公演に、ギャラはいらないと言って手伝いにきてくれた。日頃は宝塚の花の道を真下に見るペントハウスで、ジェンヌに囲まれて優雅な日々を送っている。彼女のつくるカレーを生徒たちが喜んで毎日食べにきてくれるの、と幸せそうに語っていた。


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プロフィール

星野 和彦

Kazuhiko Hoshino

1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表

作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞


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