山を買いたい人が増えているそうだ。
コロナのお蔭で、夜の街を奪われ、他県からは邪魔者扱いされ、職場にいきたくともリモートと言われ、手狭な我が家に閉じ込められては、「俺の世界は何処だ!」と叫びたくなる気持ちは充分理解できる。
そこに付け込んだのは、不動産屋だ。「どうです、この際山でも買いませんか? お買い時ですよ。」値段を聞けば、なるほど安い。百万前後から三百万も出せば東京では考えられないほどの「山」が手に入る。
とりあえず山小屋など建てなくていい。自分の山にテントを張って、週末のバーベキューと洒落こめば万々歳なのだ。女房はアルコール・ランプのロマンティックな灯を想像し、子供たちもトンボ取りや、清流の魚釣りを想像する。
春は花見にタケノコ掘り、夏は鮎つり、秋は松茸と、不動産屋はここぞとたたみ込む。コロナも気にせず好きな時に、好きなように使えばいいので、興味があれば今すぐ手付を、何分この山は人気がありますので…云々と見事に嵌まる人が急増中とか。
猿やイノシシやシカ、立派な熊などの先住民がいることは忘れがちである。蛇も毛虫もモグラも生活しているのが「山」であることを忘れている。
有名女子大を卒業した妻が、最も嫌うのは蚊であり、蛾であり、虫類だ。ましてやヤモリなど出ようものなら、この世のものと思われないほど騒ぎまくる。
かくて山の初日の雑草刈りから、挫折がはじまる。
山を楽しむにはそれなりの努力がないと楽しめないという現実がある。
山を買う前に立ち止まって再考することをお勧めしたい。
マイ山が欲しい
コメント
プロフィール
星野 和彦
Kazuhiko Hoshino
1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表
作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞
コメントを残す