夏の軽井沢はペット天国。どこかに五代将軍綱吉が隠れ、ひそかに生類憐みの令をだしているのでは、とさえ思ってしまう。朝寝ぼけ眼で森のあいだから下の道を覗けば、すでに犬にひかれて人間が歩いている。なかには人に引かれた犬もいるのだが、おおかた犬にひかれた人間が多い。町には犬泊まれますのペンション、お犬様大歓迎のカフェ、なかにはお写真お撮りしますの看板やら、犬と歩こう軽井沢ウォークと、町中あげて犬に媚びている。恐らく人間社会について考えることがないので、すべてはペット可愛い、ペット大好きの思考回路が定着して、犬を可愛がることこそ心やさしい人間の手本と錯覚しているのだろう。元禄大飢饉の折、町衆を無視し犬一匹に白米3合とイワシ1合をくばって町民の怒りを買った犬公方のごとく、「万事万物が逆さで道も法もない」と嘆いた新井白石よ再び出でよ、の気分である。ウーパールーパーが骨折した、おおとかげが皮膚病になった、カメが膀胱結石になったと騒ぐ暇があったら、近所となりの老人探しでもしたらいいだろう。エイズをはじめ、人獣共通感染症など動物の保菌状態はほとんど解っていないといわれているし、人間が努力して解明しているのは、牛豚などの商業動物に限られているので、いつ第三のエイズが勃発してもおかしくないといわれている。軽井沢でもアライグマやらサルやら、エボラ出血熱、マークブルグ病の寄生体がうろうろしている。
プロフィール
星野 和彦
Kazuhiko Hoshino
1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表
作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞
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