ベジャール・肉体の20世紀

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 20世紀最高の振付家モーリス・ベジャールの後継者ジル・ロマンとその仲間達のドキュメンタリー「ベジャール、そしてバレエはつづく」を見て久しぶりに涙した。 1960年5月14日マチネーのパリ・サラベルナール座、前年の暮ブラッセル王立劇場で発表され賛否なかばの超話題作「春の祭典」が上演された。のちにこの作品がバレエの歴史を書き換えることになろうとは露知らず2階の正面に座った。やがてストラビンスキーの衝撃的音楽とともに繰り広げられたのは、バレエ的物語ではなく、儀式でもなかった。タイツ姿の40人の肉体が性に目覚め、衝動に支配され、成就に向かってぶつかりあい疾走していた。コールドバレエなどというなまぬるい表現はない、そこにあるのは性の行為そのものだった。肉体の塊による法悦の成就が見事なまでのラストシーンを創りだした。「性的興奮の絶頂である死において、人は再び性別を失い、理想的な人間存在になる。」命のかぎり踊った果ての生の輝き、死の喜びにみちていた。ジル・ロマンの映像に鮮やかに浮かび上がったのは、あの日の20世紀バレエとの遭遇、そしてあの時を与えてくれた神への感謝であった。


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プロフィール

星野 和彦

Kazuhiko Hoshino

1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表

作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞


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