フナッシーの収支決算書

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 流行りもののなかでも特に愛情のもてないのはゆるキャラというやつである。
 この胡散臭い気持ちの悪い縫いぐるみに熱狂するタレント弁護士など、人の犯罪にかかわる知性や感性がありやの疑いを持つ。
 ゆるキャラの未熟さやいい加減さが通用する社会は、やはり社会そのものが未熟でいい加減なところが多々あるからだろう。
 縫いぐるみのデザインに於いて、素材の選択に於いて、色彩のレイアウトに於いて、さらに縫製技術の総てに於いて、いい加減が充満しているのが、ゆるキャラといわれる人形たちだ。成熟した社会が受け入れるには、あまりに低次元な作り物なのだ。
 代理店の広告媒体としては好都合なのかもしれないが、文化に対するモラルがあればとりあげないのが、広告代理業の欣志ではなかろうか。儲かるとあればなににでも手をだす近頃の代理店は生き馬の眼をぬく泥棒稼業に近い。
 ところで「フナッシー」の決算書がすぐれているのは、このゆるキャラは公務員でもなければ、芸能プロの所属でもないところだそうだ。
 フナッシーの今年の年収は、約8億円と伝えられる。テレビやイベントへの出演料は一件につき80万円、CM出演料は2000万円、関連グッズ、コラボ商品の売り上げは5億円というから驚く。
 地方自治体、特定商品の宣伝物のどれにも属さず、独立独歩でこのキャラにささげた町の親父が主体なので、個人事業主そのもの。
 六本木ヒルズに住むIT企業の青年実業家に対して、まったく手作りアナログのビジネスが、このフナッシーということだ。
 がいずれにしても、このゆるキャラブームはそろそろ終わりにしてほしい。
 サブカルチャーが表通りを歩くと町はますます劣化する。


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プロフィール

星野 和彦

Kazuhiko Hoshino

1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表

作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞


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