星条旗の音楽とともに、舞台にライトがつくと客席はいっせいにどよめいた。
左肩のブルーを背景にした部分にはアメリカ将兵のパンツが50枚並んでいる。それも特大3Lサイズだ。右側とパンツの下は赤をバックにアメリカ兵のモモヒキが一列40枚と60枚見当で6列、300枚以上のモモヒキが見事に並んでいる。つまり兵隊のパンツとモモヒキで星条旗を表現している。どれも洗濯を重ねてちょっぴりくたびれているのが、前線の兵士を暗示してなんともやりきれないが、楽しい舞台装置になっている。
ビバ・エルビスと題した超モダンなアリア・ホテルでのメガ・ショーのひと幕。エルビス・プレスリーの一代記をショーにアレンジした作品だが、ニューヨークでもベガスでも、黒人と白人の壁が初めて取り払われたロックン・ロールの時代に回帰する気分がとても強い。人気は落ちていても、オバマ大統領の登場が大きなキッカケになっているのかもしれない。
プレスリーの時代は、ハリウッドの良き時代でもあったので、彼の映画出演作も多く、フィルムを徹底的に分解し、現代的な映像と舞台の連鎖劇、連鎖レビューに仕上がっている。開演前から緞帳には古ぼけたラジオが映し出され、流れてくるロックンロールに客席のアチコチに配されたエルビス・フリークの女の子たちが踊りくるっている。
定刻、幕が四方に飛ぶと、いきなりエルビス・シアターとなってネオン・ジャングルと花火のなか、天井、中空から大舞台、客席までロックンロールの大デモンストレーション、頭のうえでも、眼の前でも、遥か舞台のむこうでもロックンロール、奥のスクリーンにはエルビス登場の頃の熱狂的な映像が次々と映し出される。、やがて戦争にとられ、兵士としてのプレスリーから、帰還後はアカプルコの恋の一夜と、見せ場は時代を切り取ってロックンロールの意味が鮮やかに浮かぶ。
内田なにがしが、浮気のはてに警察につかまり、お詫び会見で「ロックンロール」と叫ぶのは、どこか違っているような気がする。
パンツとモモヒキとロックンロール。
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プロフィール
星野 和彦
Kazuhiko Hoshino
1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表
作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞
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