パリ幕の内弁当のサギ

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パリ幕の内弁当のサギ パリ幕の内弁当のサギ
 駅弁は大好きだ。
 軽井沢駅には、釜めしで有名な荻のやが作る玄米弁当がある。500円という値段、コスパに優れた健康にいい駅弁である。ガンモと少しばかりのひじきと、きんぴら、そして沢庵という素朴なおかずだが、玄米を噛みしめながら食する弁当として日本一の駅弁とおもっている。玄米弁当を食べると、その日いちにち胃の調子がいいような気がする。
 京都へ行くときは、北陸新幹線では駅弁を食さず、東京駅の祭または踊でその時々季節の駅弁を買って、東海道新幹線に乗ってからいただく。食べ終わると熱海あたりを走っている。ときに右手に富士山を見ることもある。駅弁と東海道新幹線は相性がいい。
 京都からの帰りは、京都駅伊勢丹の地下にある特別弁当のコーナーに立ち寄る。名料亭つるやの弁当から,吉兆、菱岩、和久伝の弁当まで揃っている。和久伝の鯛寿しは、いつ食べても飽きることがない。都からの帰途さいごの満ちたりた気分が味わえる。
 今日、祭のまえを通ったら「パリ幕の内弁当」のキャッチが眼に飛び込んだ。えっ!そんな馬鹿なパりに幕の内がある訳がない。成田屋のシンボル三枡が大きくあしらわれ、赤に白抜きで大入り、そして矢の根の錦絵があしらわれたパッケージである。パリ幕の内弁当とあるからには、なにかパリの食材がつかわれているに相違ない。持前の食いしん坊がくいついた。コカコーラ製のからだすこやか茶Wとともに北陸新幹線に乗った。
 車中早速にひろげた幕の内だったが、パリの痕跡は見あたらない。玉子焼、蒲鉾、サーモン塩焼き、煮物は里芋、蒟蒻、人参、椎茸、絹さや、そして海老天、きのこ天、ピーマン揚げ、きんぴら牛蒡、豆腐田楽、鶏照焼、ひじき、パブリカ揚、飯はきのこ茶飯、栗ご飯、グリーンピースの炊き込みご飯、そしてどうした訳かどらやきがついている。何処がパリ幕の内かまったく理解できないままに、弁当をたいらげた。折を棄てる前まで色々と考えたがやつぱりわからない。ふと食材の描かれている裏をみたら、日本語の名称の下にフランス語が書かれていた。フランス語のメニュー付という表示なら許せるが、「パリ幕の内弁当」はサギと言われても抗弁できない。
追伸 パリ幕の内弁当は、パリ・リヨン駅で売っている幕の内としった。それにしては工夫のない弁当である。


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プロフィール

星野 和彦

Kazuhiko Hoshino

1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表

作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞


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