いまひどく神経質なのが著作権というお化けだ。
この国ではあらゆるジャンルに先駆けて、音楽著作権が確立した。かっては映画スターという種族が豪壮な家に住んでいたが、いまでは音楽著作権に保護されている人々がみな裕福な生活を営んでいる。
本も売れなくなったので、作家という人たちがもっている文芸著作権もさほどではなくなった。
ましてや演出著作権などというものはほとんど存在しない。芝居、ミュージカル、オペラ、ショウ、テレビなどずいぶん多くの作品にかかわってきたが、律儀に上演著作権料を送ってきてくれたのは、ジャニーズ、ナベプロ位のものだった。概してポップス系の人の方が正直で、クラシック系の人には著作権無視のひとが多かった。一時、アメリカが音頭をとって、ビジネス・モデルまで著作権を設定しようという動きがあったが、後進国の浮沈にかかわるというのでうやむやになっている。
パリ市内に14の美術館を持つ、PARIS MUSE’ESという公的な美術運営団体が、ことしから14の美術館がもつ作品10万点のデジタル映像を自由に使用していいという方針をうちだした。美術館、美術展の撮影禁止がなくなったのだ。
日本では馬鹿の一つ覚えのごとく「撮影禁止」が横行しているが、彫刻や立体作品などで、はてなんで撮影禁止と首をかしげるような場面にまま遭遇した。この件については、さすがアートの国フランスであると感心する。
映像でも広告でも下手な絵やイラストに支配されるより、評価のある作品が登場したほうが、いいにきまっている。
ルーブルの廊下でも模写や摸刻に励んでいる美術学生がいるが、立入禁止というよりははるかに明日の芸術家を育てている、といった気分が伝わる。すべては人真似から始まるのだ。
パリの美術館全作品の画像解放
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プロフィール
星野 和彦
Kazuhiko Hoshino
1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表
作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞
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