江戸っ子はパリにいても、蕎麦が恋しくなる。
蕎麦やはいくつかあるのだが、食べてガツカリしたくないので足を向けなかった。
左岸、サンジェルマンの名物カフェ、レ・ドゥー・マゴとカフェ・ド・フロールの間の路を20メートルも行かないところに蕎麦やがあるのに気がついた。
夕方、人品卑しからざるフランス人夫婦が並んで店の開くのを待っていた。ひょつとしてこの店は確かかもと思い電話をかける。夜は7時半からなので、あと10分ほどお待ちくださいという。
メニューをみると日本の蕎麦やと変わらない。入口の傍らでは、蕎麦打ちを見せていた。自信があるに違いない。蕎麦打ちはどちらで修行されたのか、質問すると「山梨」という答えが返ってきた。「ひょつとして山梨の翁ですか」「そうです翁です」ならば信用できる。来月は久しぶりに日本へ行きます。全国翁会に出席のためです、とのこと。
御代田にある翁を思い出しながら、天ぷらそばを注文し、久しぶりの蕎麦を待った。周りを見まわしても、ワインを楽しみながらのカップルや、スーツ姿の紳士同士など上客が多いし、インテリアもシンプルで小気味いい。
二階ではパァーティの要望にも応じてくれるという。お運びのスタッフも清潔感のある礼儀正しい若者が揃っていた。
店の名は「円」という。のちにショップ情報をみたら、セレブの集うお蕎麦やさんとあった。
パリの本物の蕎麦や
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プロフィール

星野 和彦
Kazuhiko Hoshino
1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表
作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞
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