パリの昼下がり、素敵なマダムに会いたくなったとき、何処へ行けばいいか。
パリ一のシックなホテル、プラザ・アテネを中心に高級ファッション・ブランドが軒を連ねているモンテーニュ大通り …アルマーニ、ヴィトン、ディオール、シャネル、セリーヌ、ロエベ、プラダ、ニナリッチ、マックスマーラ、ヴァレンチノ、腰を抜かしそうなお値段の店がひしめいて美しいマダムたちを呼び込んでいる。 そぞろあるいているマダム達のオーラも半端ない。 がマダム達の興味の対象はファッション、半年の命のはかない布に持てる財を注ぎ込んでもむなしい。着飾ったマダムとプラザアテネの豪華なサロンで、お茶をしてもそれだけのこと、さほど歓びはない。
そんな風に考えると、着るものよりは食べるもの、平凡な男の発想は胃袋にいく。
パリのグルメの台所は、マドレーヌ広場にとどめをさす。パリ娘憧れの教会、いつかは私もマドレーヌで結婚式を、というあのマドレーヌ大聖堂のある広場だ。
この広場のまわりには、高級食品店が集まっている。
東と北の角にはご存じフォションの本店、黒とピンクのショップカラーが眩しい。対する西側には広場の主のような1854年創業のエディアール、並びにはキャビアハウス、そしてラ・メゾン・ド・トリュフ、うっかり昼飯と思って入ると、とんでもないトリュフ料理が待っている。近所にはマスタードのマイユ、蜂蜜のミェル、フォアグワ専門のヴァレットと、グルメ・マダムが興味を示す食材のすべてが揃っている。
買い物を済ませた奥様が広場の真ん中にある花屋へ足を向ければ、今日のお買いものは総て終りの合図。 オープンカーの男は奥様のもとに走り寄り耳元にささやく。奥様、オニモツを…、そんなアバンチュールにありつこうとパリの遊び人はマドレーヌを流している。
かくして奥様のおうちがメシーナ通りだとすると、午後2時から5時までの昼顔、欲求不満のカトリーヌ・ドヌーブと、つかぬまの愛を燃やすことになるのかもしれない。
パリの昼下がり
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プロフィール
星野 和彦
Kazuhiko Hoshino
1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表
作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞
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