来年のパリ五輪が話題になっている。
セーヌ川ぞいにある古本屋……ブキニストと呼ばれているその本屋さんたちは、500万近くの権利を払ってセーヌ両岸の淵に本屋を開いている。医学専門もあれば、建築本専門、映画専門、お土産用パリ風俗図専門と、一間と少しばかりの濃いみどり色の空間を設けて、本の商いをしている。世界中さがしても何百メートルの本屋の風景が都市の真ん中にある町はない。
「パリは本にはさまれて川が流れている、世界唯一の都市である。」と喝破したのはブレーズ・サンドラス、詩人であり、小説家でもある。
思想家のヴァルター・ベンヤミンは「パリはセーヌ川が、図書館の大きな読書室を横切っている。」と、それほどにこのブキニストはパリの人々から愛されてきた。
ところがパリ警視庁から、来年のオリンピック期間中、ブキニスト達にセーヌ河畔に並ぶみどりの本箱を撤去するよう要請がだされた。
なんのためのオリンピックか、パリのリアルを発信するためのオリンピックではなかったのか。猛烈な反対が噴き出し、ブキニストのある河畔は撤去反対署名運動のセンターとなっている。
今日本では本は全く売れなくなり、人々の注目は活字から漫画へとなだれをうっている。本の重要さ、活字の重要さを語る政治家もなく、唯々諾々と流れに従うオバカな政治家だらけで、ポスターに学歴は書いてあるが、見識のある政治家はいない、悲しい現実である。
パリ・ブキニスト達の心意気を見よ、と言いたい。
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プロフィール
星野 和彦
Kazuhiko Hoshino
1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表
作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞
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