ニシキというウルトラ・スーパー市場

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 京都の町衆なら、幼い頃から必ず通った市場がある。
 通称ニシキ、錦小路市場というのが正しい言い方だが、京の人はみなニシキの通称で済ます。
 普段着の昼下がりのお買いものといえば、今夜の食卓のための買い出し、にしきが圧倒的に多い。なかには料理やさんやお茶屋の女将さんも交じっている。
 新京極の錦天満宮から壬生川通りまで、400m弱の細い狭い小路なのだが、ここに126店舗の魚、京野菜など生鮮食品、乾物、スイーツ、惣菜から台所用品まで、あらゆるものが揃っている。
 ニシキがある限り、ジャスコもダイエーもデパ地下も一流は名乗れない。スーパーマーケットの机上の仕入れや近頃のグルメ・スタイリストは、軽くイナサレテしまう。都1000年の台所の知恵が、集積しているのが、ニシキの市場だから。
 若狭一汐は津乃弥、川魚はのとよ、生麩は麩嘉、佃煮は野村、水炊き鴨鍋は鳥清、ごまはごま福堂、唐辛子はお茶の子さいさい、漬物は桝悟に打田、出汁巻きは田中鶏卵、包丁料理道具は有次、老眼鏡の健美堂まで揃っている。海外からの青い眼のシェフ達は有次に群がっている。名前を彫り込んだ有次の包丁をもつことが彼らのステータスになっているそうだ。


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プロフィール

星野 和彦

Kazuhiko Hoshino

1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表

作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞


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