デザインのプレゼンテーションを受け、検討しなければならない機会がままある。近頃のデザイナーは、自分の作品であるにもかかわらず「作品」といわず「データー」「データー」という。推測するにパソコンで作業しているためにすべてデーターなのかもしれない。が立ち止まって考えてみると、データーという数値でものごとを判断する立場は効率第一主義の強欲資本主義の産物であり、戦後アメリカ空軍から輸入された統計学の所産なのだ。今もっとも重要なことは数字と別れ、人間に帰れということだ。パソコンという箱の奴隷となり、データーデーターとわめいているうちに人間を失いヒューマンな感性を喪失して、芸術家ならぬレイアウト屋になりさがってしまうだろう。わずか一行数文字の挿入でも、「データーで送ってくれ」という、そこには考える力もなければ、みずから打ち込もうという意思もない。あきれて開いた口がしまらない。デザインというのは精神の所産であり、美意識の結晶なのだが、みずから堕落の道をあるいて「データー」屋になりさがっては、先人達が築いてきたペンや鉛筆のデザインを超えることは永遠にできない。
プロフィール
星野 和彦
Kazuhiko Hoshino
1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表
作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞
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