近頃スポーツマンがおかしい。本来肉体のカタルシスであったスポーツが、体験型イベントに代わってしまった。なにも考えない脳の弱い国民が、堕落したスポーツにどっと押し寄せる。
「東京マラソン」などそのさいたるものだ。埃だらけ、排気ガスの渦巻く東京の真ん中を興奮して走っている。青梅マラソンあたりまでは、やっぱり緑のなかでみんな走りたいんだ、と理解していたが、東京マラソンに至っては、下町の商家やタクシーの運転手さんなどみんな迷惑している。その日一日商売にならない、困ったもんだとなげいている。豊かな自然の中を走るならともかく、近頃の「街中雑踏マラソン」には、生活感もライフコンセプトもない。靴やと運動着やとスポーツ・ドリンク・メーカーのための広告イベントだ。石原慎太郎の選挙運動だとか、金もうけのための東京マラソン財団といわれても仕方がない。
すこし人より走れるというだけで、カンボジア国籍をとってオリンピックをめざすという「猫ひろし」に至っては、あいた口がふさがらない。オリンピックは、ナショナルフラッグのもとにその国の民族の能力をかけて戦うもので、個人の自己顕示欲や企業宣伝のために開かれているのではない。それゆえ国旗と国歌が必ず付いてまわる。
カンボジアに七年以上滞在し、クメール語を話せることで、はじめて国籍をとることが可能になるのだが、どうせ怪しげな特例で取得した資格だろう。カンボジアの人々に対し、とても失礼なことをしているという認識がない。
テレビ中継もスポーツ紙も、猫がめざしをくわえて走る姿を大きく報じたが、お笑いとスポーツは全く違う、モラルのないマスコミにも困ったことだ。本来さわやかな筈のスポーツが、無知と破廉恥な自己顕示欲によってどんどん汚されていくさまを見ているのはなんとも辛い。
スポーツ・マンがおかしい
コメント
プロフィール
星野 和彦
Kazuhiko Hoshino
1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表
作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞
コメントを残す