スポーツから得られるカタルシスは、肉体の浄化というのが定説だが、体罰騒動など見ていると最近のスポーツから人間の野性はなくなりつつある、といった印象か強い。
スポーツに於ける野性の重要性が見逃されている。スポーツする目的は野性の充足のはずが、経済原理だったり、芸能原理にかたむいている。
考えるな!動け!挑め!思い出せ! 忍耐!礼節! といったスポーツ原理はうっかり発言すると、古ーいと切って棄てられる。
近頃のスポーツを「栽培されたスポーツ」と認識する学者群がいる。
クーぺルタンの近代オリンピックの思想は、肉体を使って肉体の限界に挑む、だったが、最近は野性から距離を置き、道具や仕掛けに頼る「栽培のスポーツ」が多くなった。例えば、ボーリングやカーリングがいい例だが、スポーツというよりは、卓上ゲームの拡大版に近い。いずれも現代人の衰退を感じさせるというのだ。
野性は野蛮人のものでもなければ、未開人や原始人のものではない。ましてや効率を高めるために、飼いならされた技術ではない。バルザックも、素朴派のパワーこそが人間の究極といっている。
走る、飛ぶ、ぶつかる、挑む、そこにある素朴なパワーが燃焼したとき時、初めて人間の至高の限界が見えてくる。必要なのは繰り返すトレーニングと忍耐の力、それこそが人間スポーツの有りようと主張する。
下品な行動や振舞いは野性にふさわしくない。品性下劣はスポーツに相応しくない。ほんとうの野性を取り戻したとき、スポーツのユートピアが見えてくる。
スポーツの野生はどこへ
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プロフィール
星野 和彦
Kazuhiko Hoshino
1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表
作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞
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