今シーズンのパリ・オペラ座バレエ団はジェローム・ロビンスの作品特集だ。劇場はオペラ座ガルニエ、あたらしいバスティーユのオペラ座よりいろいろな意味でガルニエのオペラ座が似合う。振付師としてのロビンスの名前がはじめて脳裏に焼きついたのは、1957年の「ウェストサイド・ストーリー」だった。それまでに「王様と私」を始めとして多くの作品に振付てはいたが、あまり印象深くはなく数ある振付師のひとり位に思っていた。がウェストサイドにおいて圧倒的な群舞のパワーをみせつけられノックアウトされてしまった。彼はバレエのなかに時代の息吹を作り出す天才であった。この夜上演された「イン・ザ・ナイト」ではお約束の三つのアダジオのなかに見事に時代の変化を表現、「ザ・コンサート」では男と女の間の埋めることの出来ない断層をユーモアラスに描き出した。ユダヤ系アメリカ人の彼は両性愛者だつたが、充分役割をはたしてベジャールなど次世代のクリエイターにバレエを渡してあの世に逝った。大声をださずに作品をつくった彼にはトニー賞もアカデミー賞もいらなかったのかもしれない。
プロフィール
星野 和彦
Kazuhiko Hoshino
1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表
作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞
コメントを残す