ワイドショーの高名なキャスターが、「これは凄い、文化の歴史が変わりますね」
一体なんだろう?そんな凄いことが起きるなんて。余程の新発見かな、とみていたら、芸大教授のなんとか先生がこのたび発表するのが「クローン文化財」と称する日本の国宝の数々、4億画素のカメラを駆使して撮影したデータを3Dプリンターで立体化したもの、というのが実態だった。
すでに完成している作品が紹介された。
歌川広重の美人画、奈良のお寺の釈迦三尊像、敦煌の莫高窟、ブリューゲルのバベルの塔、そのほか陶器やら書の数々、キャスターは盛んに興奮し、はしゃいでいるが、何かがおかしい。クローン文化財と騒いでいるが、歴史をインスパイアできるほどの出来事なのか。むかしから贋作は腐るほどあったし、ルーブル美術館の廊下ではイーゼルを立てて、画学生たちがいつも名作の贋物を描いている。腕を上げるには名作の偽作に励むのがいちばん良いといわれてきた。
日本の美術の世界には、昔から「写し」という作品があった。名品になぞらえて無名作家が作った偽物だ。ただこの偽物は「写し」として誰もとがめない。
より細かく精巧に作られた作品は、「本歌写し」として人気を集めた。
クローン文化財などという怪しげな名前をつけなくとも、堂々と「本歌写し」として公開すれば、日本のユーザーはそれで納得する。
海外でもクローン文化財などという怪しい呼称ではなく、日本伝統の「本歌写し」として公開したほうが、より識者の注目を浴びることだろう。いま日本語の表記は静かなブームを呼んでいるから。
クローン文化財を振り回している芸大教授とワイドショウのキャスターは、もう少し勉強なさったほうがいいかもしれない。
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プロフィール
星野 和彦
Kazuhiko Hoshino
1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表
作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞
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