健康のために、健康のためなら、とにかく健康の二文字がそこいら中に踊っている。
朝はまず健康青汁に始まる。健康ベルトに身体をまかせ、一万回のブルブルで脂肪を落とす。
近頃はあまり歩くことがないので、健康ウォーカーで動くベルトの上を30分ほど歩く。家のなかは通販で購入したブラサガリ健康器から健康エキスパンダーまで、健康器具であふれている。
食事になる。勿論健康サラダを中心に健康食品のみのオール健康食である。ちかごろは、酒・たばこも止めたので、健康にきく赤ワインをいっぱい食前酒としている。おかずは勿論、トマトに納豆、健康にきく噂のものしかとらない。食後の健康サプリメントが凄い。一部上場の健康サプリメントの会社のものを毎食後、30錠ずつ服用する。
出社後は健康サンダルに履き替え、健康イオン発生器をテーブル横において仕事をする。いつも健康保険を肌身はなさず、昼休みには健康エクササイズを女子社員とともに励んでいる。来週末は健康パンツを穿いて、健康ハーフ・マラソンに参加する予定だ。
つねにテーマは健康、趣味も健康、そんな健康オタクが、国中に異常に増殖しつつある。だから都会でも田舎でも健康イベントが、目白押しだ。歩いて、走って、蹴って、投げて、漕いで、大声をだして、健康依存症はますます増える。
その筋では、人間の心の隙間にいかに不安を投げ入れるか、それが勝負だという。だから健康産業と呼ばず、不安産業と呼ぶ。日本の不安産業はまだまだ成長するといわれている。
キャッチは健康
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プロフィール
星野 和彦
Kazuhiko Hoshino
1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表
作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞
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