桜の便りとともに、町で眼につくのはリクルート・スーツだ。
さあ、今日から私は社会人です。俺は働くぞ。リクルート・スーツにはそうした空気がただよっている。入学のための制服も、看護師になるためのナース服もどこか清々しく、若いエネルギーと覚悟に充ちている。
服装は自由がなにより、自由な発想が出来る人材を求めています。その一環として服装を自由にしました。といま経営状態最悪のソニーが宣言しているが、カン違いもはなはだしい。服装を自由にしても、決して優れた人材は現れない。
まま六本木ヒルズに足をふみいれることがあるが、儲けがしらのIT企業の仕事場を覗いてみると、愕然とする。髪型自由、服装自由、モヒカンからヤブレ・ジーパン、ゴム草履にスリッパまであり、どうみても犯罪者集団だ。ここは賭博場かとびっくりするが、若い経営者は誇らしげに、うちは自由ですからというが、ここから人類に、歴史に貢献する文化が生まれるとは到底思えない。
先進国のドレスコードはより厳しい。カジュアルが世界的な流行だといっても、それはあくまでもオフ・デューティでのこと。夜の正装と、昼間のビジネスには厳格なバリアがある。だから世界一の人気ブランドであっても、職場には着て行けないスーツがある。
お葬式にTシャツ・ミニでは行けない、というのは文明社会の約束事だが、約束があってこその世の中ということにも心する必要がある。服装くらい自分で決めろ、というまえに、何をしたいのか、なにになりたいのか、しっかり決めろといいたい。大学院まででて、今自分探しをしてます、等と寝言をいっている若者を、まず屑かごに移さなければならない。
カン違いの服装自由
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プロフィール
星野 和彦
Kazuhiko Hoshino
1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表
作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞
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