カナカナのもの悲しく

by

in

カナカナ.JPG
 軽井沢の森には秋がきている。
 線状降水帯の合間をぬって、カナカナが鳴いている。
 子供のころはカナカナ蝉と教えられたが、長じてヒグラシとなつた。
 森のなかの薄暗いところからヒグラシが誘ってくるようだ。
 漢字のヒグラシ……「蜩」はあまり好きになれない。カメムシ科に属すると聞いて、やはりと納得した。
 蜩の文字にはたくらみごとを感じる。秋をつげているような声のうしろに台風が待ち構えているようでもある。
 涼しさを装って、もの悲しさがやってくる。
 証拠の特選句である。
 ……人の世の 悲し悲しと 蜩が   高浜虚子
 今日も 空蝉を拾らふだけの 朝か  立川志らく   久しぶりの自由律が良かった。
 


コメント

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です


プロフィール

星野 和彦

Kazuhiko Hoshino

1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表

作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞


カテゴリー


月別アーカイブ