エリゼ宮のファースト・レディ

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 革命記念日(パリ祭)の朝、コンコルド広場の観謁式場には世界各国のファーストレディがずらりと並んだ。中央にはサルコジ・フランス大統領夫人カーラ・ブルーニ、ネックレスもイヤリングもなく、靴は低いモカシンのパンプスに黒の膝丈のサック・ドレス、彼女の計算されつくした演出に周りのファーストレディ達の過剰な宝石が輝きを失しなっていた。
 大統領夫人になるまえはミックジャガーやエリック・クラプトンと浮名を流し、シンガーソングライターとしてはミリオンセラーを記録した元モデルだった。「どうせ売名行為よ。すぐ離婚するでしょ」という噂をよそにこのところファーストレディの評判はうなぎ登りだという。
 5月に催される64回カンヌ映画祭では、彼女の出演したウディアレン監督の「ミッドナイト・イン・パリ」がオープニング上映作品にえらばれた。ゴシップ・メディアは、カーラは大根で32回も撮りなおしたとか、さすがのウディアレンもキれたとか面白半分のゴシップが乱れ飛んでいるが、監督はすべて根も葉もない噂話と否定している。カーラの役どころはロダン博物館のガイドということだがいまから楽しみなことだ。
 サルコジ大統領の前妻セシリアによってメチャクチャにされたエリゼ宮の秩序もだいぶ回復し、不仲だった父とも関係修復し、最初の妻マリードミニクもエリゼ宮のパーティに顔をだすようになったといわれている。いまカーラは文化音痴で野暮なサルコジをすこしでも知的なキャラクターに変えようと懸命に努力している。自身の仲間たち、作家や音楽家、映画監督などをエリゼー宮のパーティに呼び、フランス文化の良き理解者としての大統領のイメージ・アップを図っていると伝えられているが、カーラ・ブルーニはなかなかの戦略家だという評価が定着しつつある。奇妙な占いにはまるどこかの国のファースト・レディよりはるかにマシということだろう。


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プロフィール

星野 和彦

Kazuhiko Hoshino

1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表

作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞


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