もうひとつのパリ

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 見渡す限りの地上にクルマはない。車道がない。鉄道もどこにもみえない。電線もない。よく眼にする未来都市の想像図がそのままそこにある。オベリスクのあるコンコルドから、シャンゼリゼーの大通りを抜け、さらにエトアールの凱旋門を抜けて西へ一直線に4キロ、忽然と現れるのがラ・デファンスの近未来都市。そこは世界の超一流設計家たちが、21世紀の夢を託した建築群の集積都市だ。グランダルシェと呼ばれる新凱旋門は巨大な空洞のアーチ、高さ110m、幅106m、奥行き110m、ただの新凱旋門ではなくなかには役所や企業オフィスが入って働く凱旋門になっている。この門を囲んでなめらかな曲線のガラスビル、球体ピル、S字ビル、逆台形ビルなど考えられるあらゆる形のビルが集まり、カラー・ポイントは巨大なミロの彫刻。都市工学の専門家、明日の巨匠をめざす設計家にとってこんなに素晴らしい生きた美術館はない。フランスの人々が考える現代建築とは?にこたえている。歴史的建築物の保全について、あれほど喧しい彼らが、次の世代に何を残したいのか。伝統は造り続けることだという壮大な提案でもある。伝承と創造にたいするフランスの見事な試みが、このラ・デファンスと呼ばれる前衛都市にある。


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プロフィール

星野 和彦

Kazuhiko Hoshino

1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表

作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞


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