ぶぶ漬けの贅沢

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 お茶漬けのことを京都では「ぶぶ漬」という。
 祇園界隈にはぶぶ漬け屋さんが多い。
 まず昔からある花見小路の「十二段家」さん、ここはしゃぶしゃぶが有名だったが、地元のひとはぶぶ漬を食べに行った。
バレンタイン・デーにはハートの形の千枚漬けのある西利さん、今様デザイナー建築の西利ぶぶ漬け家が四条大路に面してある。
 川勝さんは八坂神社の石段下にある。それぞれに微妙に味付けが異なり、それぞれのファンがついている。
 夜、しっかりした懐石料理などいただくと、あくる朝はさっぱりとお茶漬けなどがほしくなる。
 寝ぼけまなこで川勝のぶぶ家に脚がむいた。竹のれんの音に迎えられて席につく。四角い皿に盛られた季節の漬物が楽しい。
聖護院かぶらの千枚漬けはまだ残っていた。まつたりとした昆布の味が歯切れのいいかぶらに乗って絶妙なバランスをたもっている。
 壬生菜はぴりっとした辛さとシャッキとしたはざわりが美味しい。口の中に春のたよりがひろがって季節が広がるのは菜の花漬け。
しょうがも玉ねぎも、こかぶもみょうがも、みな季節をのせて膳にひろがる。漬物11種のシアワセに大往生なのだ。添えられた赤だしも
深くて美味しい。
 信州では漬物といえば、野沢菜ぐらいしかおもいだせないが、京都の365日にとうじょうしてくる漬物は軽く30種はこえている。
 ウリもキウリも日の菜もみんな旬があって、季節とは切り離すことが出来ないので、ますます季節に生きるシアワセが身に染みる。
 庶民の贅沢はブブ漬けにとどめを刺す。


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プロフィール

星野 和彦

Kazuhiko Hoshino

1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表

作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞


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