なんでも団体趣味

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 「なんでも団体」「ツルンデなんぼ」もう少し気取っていえば「グループの美学」、どういう訳か日本人ほど団体好きはいない。心静かに軽井沢の風…空気を楽しめばいいのに、と考えるのは少数派で、埃立つ街道筋をいい大人がゼッケンをつけて団体で歩いている。
 ツーデイ・ウォークとか、サンポ・とらべるとか、天下の公道をあるくのに3000円、5000円を払ってひたすら歩く不思議なグループである。秋の朝、異様な空気を感じて窓辺によると、下の道から30人ほどの人々が一斉に上、つまりわが家を見ている。なかには双眼鏡で見上げている人もいる。こちらは寝巻き姿なのであわててガウンを羽織り、ふたたびピクチャー・ウインドウから恐る恐る下をのぞくとなんのことはない。さっきまでわが家を覗いていた人々は、ぞろぞろと移動し始めている。どうやらバード・ウォッチングのツアーのようだ。
 芸能界でもこのところ団体ばやり、AKB48、SKE48、NMB48、EXILE、アイドリング、さくら学院、ぱすぽ☆、SUPER☆GIRLS 数え上げたら切りが無いほどの多人数化現象。いつでも会えるアイドルとか、みんなで育てるお姉さんとか、ひとりはトキメク人がいる、とか芸能のキャバクラ化にほかならない。始めからアマチュアを売りにしているのだから、唄にしろ踊りにしろレベルはそこそこ。当然技術とは関係ないところで人気投票とか、ジャンケン大会とか、限りなく芸能の白痴化に邁進している。それに乗って、ジャンケン大会を中継するテレビ局があるということに愕然とする。少女たちのジャンケンごっこをまともに見る視聴者がいるのか、と問いたいが、そこそこに視聴率はあるというのだから、視聴率はまさに阿呆率といえよう。
 世界の街角から日の丸のツアコンが消え、ひとりひとりが暮らしをコントロール出来るようになったとき、初めて日本人は世界に通用する大人に育ったということだろう。


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プロフィール

星野 和彦

Kazuhiko Hoshino

1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表

作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞


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