「貴方、苦手なものはあるの?」料理屋の女将がきく。「気の強い女性がちょっと…」若い客が答える。「…意外と贅沢。」つぶやく女将。このコマーシャルを見たとき、いままでなんとなく抱いていた疑問が氷解した。そうか、世の女性はだいたい気が強くて、気が強くない女性を探すのは至難の業なのだ。十月十日大きなお腹をかかえ、妊娠出産の難事をこなす現実をみれば気が強くて当たり前、神様は動物的現実に答えて女性をつくられたのだ。軽井沢にも六本木にもまず「気の弱い女」は見当たらない。「頭の弱い女」「体の弱い女」「ファッションに弱い女」はいるけど、気の弱い女はいない。もしいるとすれば、ごく自然に気の弱いふりができる女たち。そうした点からいえば、いわゆる京女の類いは達人だ。とりあえず優しく気の弱いふりをして実はものすごく気が強い。未熟な男達は錯覚のドツボに嵌まる。「気の弱い女」とは妄想の産物で、お伽の世界の人魚姫なのだと悟っても手遅れ、はんなりと京言葉に幻惑され、一生の不覚とつぶやいても、人生の贅沢にはとどかない。気の強い女が苦手ということは、女が苦手と悟らねばならない。
プロフィール
星野 和彦
Kazuhiko Hoshino
1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表
作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞
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