ときにこわれる女がいる。
こわれるというのは、精神の平衡が保られなくなり、著しく表情の一部が突出することだ。
ある時、笑いの堰がこわれて、際限なく笑い出す。自分の制動がこわれて、笑いが止まらなくなる。ここでは滑稽も、自嘲も、優越もまったく関係がなくなる。テレビの本番中に笑いが壊れて止まらなくなり、事後 退職願をかいて辞めた女子アナがいた。
怒りの堰がこわれる女には、まま遭遇する。というより女性の身体には怒りの素がいっぱい詰まっているのかもしれない。いわゆるヒステリーという生理現象だ。突如平和が飛び、破壊的になる。不安定な生理状態が突然現れ、論理性を失うという特性がある。だからその飛躍についていくのはかなり困難なのだ。解決法としては、ひたすら怒りの素因を除去するしか方法はない。アヤマリタオスというのもひとつの解決法ではある。
こわれる女の最上位は、なんといっても涙の堰がこわれる女性だ。女の涙は古今東西を問わず最強の武器と言われてきた。これも突然に発生する。メロドラマを見ていて感情移入し思わず流す涙。失恋の痛手や最愛の家族を失った悲しみの涙、わが身の不遇、孤独感によりそった涙、自己防衛のため突然に泣き出す女、最近では男もこの状態に陥ることがままある。公けで涙する男はあまり信用できない。
喜びの涙は美しい。真っすぐな正直な心の涙に接したとき、ああ生きていて良かったとさえ思う。
こわれる女
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プロフィール
星野 和彦
Kazuhiko Hoshino
1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表
作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞
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