「きみを愛してる。熱に浮かされたように。」ヘンリーミラーがこの言葉を贈ったのは、いつも抜けるような美しさを湛えていた告白文学の白眉アナイス・ニンへの花束だった。ここ一年僕のなかで忘れていた作家アナイスをたびたび耳にするようになって、あらためて人と人のつながり、週刊誌風にいうところの人間相関図が浮んできた。アナイスへの繋がりは水森亜土に始まる。日本橋のたもとのモリガールだった彼女が、ハワイからウクレレを持って帰ってきた。その頃銀座でサロン演劇なるものをやっていた僕の処へきて歌って芝居がしたいという。若くはじけていた彼女にLEFOR OPENOのパリ娘の絵葉書を見せた所たちまち今日に続く亜土ガールの原型ができた。そこで彼女の親友であったホキ徳田に連なり、後の夫ヘンリーミラーに繋がった。一方かるいざわ朗読座で執筆してくれた山口路子さんがアナイスの信者であった。直裁に自己をみつめ情熱と内省をコラージュしたアナイスと作風に重なりがあったからか。官能と孤独という今日の文学に残された唯一のテーマを想うとき、相関図の不思議に襲われる。
プロフィール
星野 和彦
Kazuhiko Hoshino
1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表
作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞
コメントを残す