お掃除の天使たち

　天使といっても、美しく可愛い天使ではない。
　ずんぐり太った小母ちゃんがいる。妙に背の高い小父さんがいる。もくもくと仕事をする若者、アラフー末期のお母さん、色とりどりの見事なチームである。
　東京駅で乗り降りするたびに遭遇する。最近ではダイヤの効率化、過密化のためにホームでのんびりと乗客を待つ新幹線はほとんどいない。東京駅に到着し、乗客をはき出すと、あっという間に乗客を乗せて出発していく。あわただしさの見本が東京駅の新幹線だともいえる。外国の友人は東京駅はアーミーのようだと感心していた。
　到着して出発までの12分が、天使たちの舞台になる。降車に2分、乗車に2分必要なので残り7分ですへてを完遂しなければならない。
　まず忘れ物チェック、座席のしたのゴミ集め、車内清掃、座席の向きを進行方向に変え、テーブルを拭く、窓のブラインドを上げて窓枠を拭く、同時にトイレ掃除、ソープ・ペーパー補充、ゴミ出し、座席カバー取り替え、車内誌チェック、ひざ掛け点検、これらを7分で完璧にこなす。
　終えるとホームに整列し「お待たせしました。」と待っている人々にお辞儀をして、次の持ち場に移動する。
　平均年齢52歳、半分は女性という見事なお掃除隊、正式には「テッセイの車両清掃チーム」というらしいが、たかがお掃除されどお掃除、世界一の天使たちなのだ。
　化粧だけはしっかりとし、家中ごみだらけのどこかのアラフォー・ママたちを、体験入隊させて鍛えなおすには、最高の「お掃除の天使たち」だと思うが如何。