おばさんはベンツに乗るな!

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 軽井沢も夏のハイシーズンになった。アウトレットに通じる道、旧軽井沢に通じる道、スーパー・つるやに通じる道、道という道は大混雑、いつもの3倍の時間をみて移動しなければすべてに遅刻する。そこで原住民もタクシーも森の中の抜け道を求めて走るのだが、これがまた大冒険。うっかり横の小路から最新のベンツがでてきたら一大事、まず運転手の性別を窺がう。男性であればひとまず安心だが、女性と判別した途端、背中に汗がじわっとくる。それもおばさんの場合、絶望的な気分に襲われる。
 ベンツのおばさんはダイナミックだ。前後の状況を無視する。10センチ譲ればスムースにすれ違える小路でも、絶対といってもいいほど譲らない。理由はともかくテコでも動かない。そのうえ睨みつけたりする。永年支配してきた家庭のくせがでる。スムーズな流れに入っても、前後のスピードに合わせることが出来ない。考えられない処で、ブレーキを踏む。不幸にも後についたらなんとかその状況から逃げるしかない。どこまでも我がままなのが、おばさんのベンツだ。目配り気配りの対象は世間つまり社会にない。恐らく半径5メートル以内の旦那だったり、子供たちなのだろう。だから逃げ出す旦那が絶えない。ふと立ち止まり、それからまたゆっくりとそぞろに歩いて風を楽しむ、そんなおばさんは居ないものか。大声でもう一度言う、おばさんはベンツに乗るな! でも一年に一人位はベンツに乗って欲しいおばさんもいる。


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プロフィール

星野 和彦

Kazuhiko Hoshino

1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表

作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞


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