おでんの買い方

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 この所めっきり寒くなっておでんの季節がきた。六本木にいたころは、銀座のお多幸、それとも浅草のお多福、醤油がきついの茶飯がどうのとウンチクに溺れていた。が軽井沢ではそうはいかない。つるやでおでん種を買い、紀文の出汁で時間をかけるか、事情が許さなければ、コンビニに頼るしかない。薄口を欲しているときはローソン、濃口のときはセブンイレブンである。思い切っておでんの前に立つと、まず容器は大中小どれにしましょうと問われる。おずおずと大を指名する。しらたき、大根と好みをいうと売り切れましたと宣告され、こんにゃく、がんもはありますよ、とにべもない。僕はしらたきが好きで、こんにゃくは嫌いなんだと心の中で呟く。いったん「おでん」を口にしたら嫌いなものでも買うしかない。最後に汁、いっぱい入れますかと親切にいってくれるが、途中こぼさないかとドキドキしながら受け取る。車に戻り悩みはどこに置くか、座席はこぼしたら大変だし、口にするものを下におくのは気がひけるし、でも結局はゴムマットに置いて、緊張のうちに発進する。途中悪路に差し掛かると、ひたすら汁の安全を祈りながらブレーキをふむ。冷汗がでる。おでんは本当に疲れるのだ。


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プロフィール

星野 和彦

Kazuhiko Hoshino

1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表

作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞


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