「生でよし、擂ってまたよし、煮てもよし、干して、漬けても、これまたよし」
昔から大根は台所のスーパースターだった。
食べ続けると腸内が強くなり、免疫力がついて「大根どきの医者しらず」とも言われた。
サンマ、サバ、イワシなど、焼き魚にはかならず大根おろしが付けられていた。焼き魚の焦げた部分にある発癌物質を、大根おろしの消化酵素が分解してくれると教えられてきた。筆者などは戦争中の子供でもあったので大根おろしだけでも充分おかずになった。そのうえジャコが乗っていれば上々吉であった。
最近はやたら細かい大根おろしが喜ばれているようだが、おろしは荒い竹でつくられた鬼おろしに限る。鬼おろしには大根が生きている。大地で育った大根のアイデンティティーが生きているし、大根の良し悪しがちゃんと舌に伝わる。鬼おろしは大根のベストフレンドである。
「よっ! 大根役者!!」なにを演じても当たらない役者のことだが、大根が身体にやさしくアタラナイことからの江戸っ子の洒落っ気ある掛け声に端を発している。
近頃では、メディアが批評記事を載せないので、どれが大根なのか、ニンジンなのかわからない。テレビにせつせと出て、客がついたら名優で、やっている芝居はゲームか、アニメ、でテンとして恥じない。ソロバンの下僕になった役者ばかりでは、志ある役者は死にたくもなるだろう。
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プロフィール
星野 和彦
Kazuhiko Hoshino
1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表
作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞
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