…18歳の彼は、子供のように美しく、青年のようにつよかった。
人生も秋に差しかかろうとしていた私が、彼に出会ったのは ある夏だった。
彼はコトが終わった後、「悪くなかったよ」憎いほどの無邪気さで言った。
離れたくなかったけど 「髪をとかしマスカラをつけて」
彼の去りゆく姿に背をむけた。わざと見なかった。
「そう忘れていただけなの、私は彼の倍のとしだったことを …… 」
ダリダがこよなく愛した「18歳の彼」というシャンソンの歌詞である。
彼女が34歳のとき、18歳のローマの学生、ルチオに心奪われた。彼女は彼との間に子供をやどしたが、境遇の違いから下ろさざるを得なかった。
このときの身体への無理がたたって、一生産めない身体になったダリダだったが、情熱的な恋のさなかでも彼女は、いつもルチオのことを思っていたと言われている。
「18歳の彼」この歌には、ダリダ自身の人生がつまっている。
白いドレスで登場し、やがて黒のラメとなり、いつか金のスパンコールとなり、ラップスカートから網タイツ、そしてビンクの毛皮へと変身していったダリダほどキャンピーでゴージャスな歌い手はいなかった。
ダリダはグレコを超え、ピアフを超えて、フランスのエンターテイメントに尽くした。
「18歳の彼」に想うダリダ
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プロフィール
星野 和彦
Kazuhiko Hoshino
1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表
作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞
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