どうしてそんなに東京にいきたがるの?
東京が宝の山にみえるのか、それとも東京へいけばシアワセが転がっているとでも思うのか。東京という砂上の楼閣に気がつかないのは、ひとえに教育の賜物かもしれない。教育者すなわち学校の先生に、大都会のカラクリやディズニーのビジネス・マジックを読み解き、生徒に警告するだけの知性がない。
地方創生はまず都市文明への批判からはじめなければならない。
東京というコンクリートの塊りは、言い換えれば厚化粧の貧民窟のようなものだ。
一生懸命働いてやつと手にいれたマンションの杭は、とりあえず体裁をととのえただけで地盤までとどいていなかった。大地震がくればたちまちに傾く危険がある。街角の華やかな広告、夜空に美しく浮かぶネオンサインはみな、あなたたちが汗水ながして働き、やっとで手に入れた流行という服装や、毎年のごとくにモデルチェンジするスマホからお金が出ているのだ。
いま「腐る経済」という本が売れているという。田畑でつくったものは、放っとけばみな腐る、腐るまえに調理したり、流通にのせたり、しなければならない。腐るという前提ですべてのものが回っていることが健全だというのだ。
これにひきくらべ、都会では防腐剤を入れたりして腐らないように工夫している。という理屈のようだが、実は都会の市場経済はぜんぜん真反対。
どんどん腐らせて使用価値をなくさなければ、経済がもたない。例えばファッシヨンで考えてみよう。春に新作として発表したものは、秋にはもう古いから止めよう。流行の今はこれです、といって腐らせる、どこも痛んでいない、充分着られるけど、もう古いから今の流行をどうぞ、と欲望に訴えるのだ。こうして次々と商品を腐らせることこそが、市場の課題になっている。
田舎の「腐る経済」に対し、大都市では「腐らせる経済」が屋台骨を支えている。
「腐る経済」と「腐らせる経済」
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プロフィール
星野 和彦
Kazuhiko Hoshino
1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表
作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞
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